スマイル歯科ブログ

アーカイブ: 2015年 December

64ふたたび

沼田市図書館主催の「著者を囲む会」に参加してきました。
今回の著者は、「64」の横山秀夫先生です。

朝刊折り込みの地域情報紙で、この催しを知ったのが火曜の朝。
もちろん「著者を囲む会」の存在すら知りませんでした。
参加申し込みは図書館のカウンターのみ。先着100名。
「休診日の木曜に行こうかな」と最初は思いましたが、
「いやいやいや、人気作家が来るのだから」と、その日の昼休みに
申込みに行きました。整理番号は78番。あぶねー。

40年前ほどから開催されている「著者を囲む会」だそうですが、
参加希望者が100人を超え、キャンセル待ちまで出たのは初めてとのこと。

横山先生は大変気さくな方で、司会者から「横山先生」と紹介されると
「いやいや『先生』はやめて下さい。横山で結構です。」
「先生」と呼ばれるのがとても苦手なんだそうです。
まあさすがに横山と呼び捨てにする訳にもいきませんから、ここでは
横山さん、と呼ぶことにしましょう。

前半は「64」を中心にした講演会、後半は質疑応答の囲む会でした。

横山さんは、上毛新聞社で12年記者として勤務していました。
事実を積み重ねて記事を書くことを叩きこまれ、もちろんそれを
忠実に実行していたので、作家に転身し、いわゆる虚構の話を書くのは、
今でも身体のどこかで強い違和感を感じているそうです。

記者の時には、日航123便の事故を取材し御巣鷹山で記事を書いたそうです。
散乱した機体や遺体を回収している自衛隊員の中で、
ペンと手帳を持ちながら「いったい自分は何をしているんだろう?」と
自問自答を繰り返した現場だったとのこと。

作家デビュー後に「御巣鷹山の経験を活字にしてみないか?」との
オファーがあり、実際に取り組んでみたものの、「とても描けない」と断念。

あの事故から17年後に描き上げたのが「クライマーズハイ」
作中で現場に到着した記者が「現場雑感」として記事を送ります。
しかし上層部の思惑により、新聞には掲載されませんでした。

横山さんは「あの『現場雑感』こそが17年後にやっと書けた
『横山記者』の記事です。」と話していました。

横山さんの作品は数多く映像化されていますが、映像化される作品は
あくまでも映像スタッフのもの、と言うスタンスで、
キャストや脚本に注文を付けたことはないそうです。
中でもNHK版・佐藤浩市主演の「クライマーズハイ」は文句の無い傑作で、
何度観ても素晴らしいと、褒めちぎっていました。

NHK版「クライマーズハイ」観ていなかったんですよ。
早速ネットで探してポチリました。10年前の放送なのに値段が落ちていない!
まだまだ人気があるんですね。納得です。

「64やそのほかの作品も含め、登場人物にモデルはいるのか?」と言う
質問に対しては、「特定のモデルを想定したことはありません。
強いて言えば登場人物は私の分身です。私自身の中にある様々な面を投影して
人物描写をしています。殺人を犯す人物を描く時は、頭の中で殺人者に
なっています。決して高い所から操っているのではなく、同じレベルまで
降りて、その人物と同化して描いています。」とのこと。

最後はサイン会。ここでも横山さんは、ひとりひとりと会話を交わしながら、
丁寧にサインをし、写真撮影にまで応じるサービスぶり。
このようなサイン会に参加するのは初めてだったので
「文庫本よりハードカバーの方が良いのだろうか…」
「ペンはこちらで用意すべき?」などと悩んでいましたが、
せっかくの機会なので、ハードカバーの「64」を購入しました。
サインを頂いた後は、中身は読まずに記念として本棚にしまってあります。

いずれも脚本・大森寿美男、音楽・大友良英、演出・井上剛トリオの
NHK版「クライマーズハイ」と「64」ですが、
私の中では「64」に軍配が上がります。
来年には、佐藤浩市主演の映画版「64」が前後篇で公開されます。
正直NHK版を越えられないのでは…と思っていますが、楽しみにして待ちましょう。

151229m3